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一人経理のリスクとは|退職・休めない状態を防ぐ経理体制の作り方

2026/7/6

一人経理から退職の申し出を受けた会社は、後任採用だけを急いではいけません。先に守るべきなのは、給与、請求、支払、入金確認、税金、月次決算を止めないことです。

退職日まで30日あるなら、次の順で引き継ぎます。

  1. 24時間以内: 締め日、支払日、権限、資料の所在を確保する

  2. 1週目: 止められない業務を一覧化し、実際に1回動かす

  3. 2週目: 手順だけでなく、判断基準と例外処理を残す

  4. 3週目: 後任または外部担当が主担当として処理する

  5. 4週目: 未処理、権限、問い合わせ先を確認して移管を完了する

この記事では、経理担当者の退職に会社側がどう備えるかを、具体的な引き継ぎ計画として整理します。退職日まで30日を切っている場合の緊急対応も後半で解説します。

一人経理の退職で止まりやすい業務

一人経理で起こりやすいリスク
図1: 一人経理で起こりやすいリスク

一人経理のリスクは、担当者が一人であること自体ではありません。締め日、操作方法、判断基準、取引先との約束が担当者の頭の中にしかない状態が問題です。

優先度止まりやすい業務遅れた場合の影響最初に確認するもの
最優先給与計算・給与振込従業員への支払遅延締め日、支給日、勤怠、振込承認者
最優先取引先への支払取引停止、信用低下、遅延損害支払予定表、請求書、銀行権限
最優先売上請求書の発行入金遅延、資金繰り悪化請求締め日、契約、送付先
入金確認・消込未入金の見落とし、督促遅延銀行明細、請求データ、照合ルール
税金・社会保険の納付納付遅延納付予定、税理士・社労士の連絡先
記帳・月次締め試算表遅延、経営判断の遅れ会計ソフト、証憑、月次チェック表
決算・申告準備税理士への資料提出遅延決算予定、未処理一覧、顧問税理士

退職者へ「業務マニュアルを作ってください」とだけ依頼しても、優先順位は分かりません。まず会社側が締め日と影響度を決め、止められない業務から引き継ぎ対象にします。

退職の申し出を受けた24時間以内にやること

経理担当者が退職した時の初動対応
図2: 経理担当者が退職した時の初動対応

1. 今後60日分の締め日を一枚にする

退職日までではなく、退職後1か月までの予定を確認します。月末に退職する場合、翌月初の給与、支払、請求、月次締めを誰が担当するかまで必要です。

  • 給与締め日と支給日

  • 売上請求の締め日と発行日

  • 取引先への支払日

  • 経費精算の締め日

  • 源泉所得税、住民税、社会保険などの納付日

  • 月次試算表の完成希望日

  • 決算・申告の予定

2. 会社名義のアクセス経路を確保する

会計ソフト、ネットバンキング、クレジットカード、請求、経費精算、給与、勤怠、共有ストレージの管理者を確認します。

個人のメールアドレスや個人端末だけで管理されている場合は、会社管理のアカウントへ移します。パスワードを表計算へ並べるのではなく、各サービスのユーザー追加と権限機能を使ってください。

銀行については、振込データの作成権限と最終承認権限を分けられるかを確認します。外部委託する場合も、原則として最終承認は社内に残す設計が安全です。

3. 顧問税理士・社労士へ連絡する

税理士や社労士が日常業務をすべて代行するとは限りませんが、直近の提出期限、未提出資料、税務・労務上の注意点を把握しています。退職日、後任の有無、止まりそうな業務を共有し、専門判断と実務作業の分担を確認します。

4. 退職者との引き継ぎ時間を先に確保する

通常業務の合間に空いた時間で引き継ぐと、重要な処理が最後まで残ります。週ごとの引き継ぎ枠と、後任が実際に操作する日をカレンダーへ入れてください。

30日間の引き継ぎ計画

1〜3日目: 業務・締め日・権限を棚卸しする

業務名だけでなく、入力と出力を記録します。

項目記録する内容
業務名例: 取引先支払、売上請求、入金消込
開始条件何の資料・連絡が届いたら始めるか
締め日いつまでに終えるか
使用ツールシステム名、保存場所、必要権限
担当・承認者作成、確認、最終承認を誰が行うか
成果物支払予定表、請求書、月次試算表など
例外金額差異、返品、未着請求書などの対応
連絡先取引先、銀行、税理士、社労士、システム窓口

この時点では完璧なマニュアルを作るより、抜けている業務と権限を発見することを優先します。

4〜7日目: 止められない業務を一度実行する

退職者が説明し、後任または代替担当者が画面を操作します。説明を聞くだけでは引き継ぎになりません。

  • ログインできるか

  • 元資料の場所が分かるか

  • 何を根拠に金額を確定するか

  • 承認依頼を誰へ送るか

  • 完了したことをどこへ記録するか

  • エラーや差異が出たとき誰へ聞くか

支払や給与で本番操作ができない場合は、過去月のデータを使って同じ手順を再現します。

8〜14日目: 判断基準と例外を文書化する

操作手順だけでは、例外が出た瞬間に業務が止まります。次のような判断ルールを残してください。

  • 請求金額が契約と違う場合の確認先

  • 支払請求書が締め日までに届かない場合の扱い

  • 入金名義と取引先名が違う場合の照合方法

  • 経費申請を差し戻す条件

  • 前月残高と合わない場合の確認順序

  • 税務判断が必要な取引を税理士へ渡す基準

良い引き継ぎ資料には、正常系の手順だけでなく、よくある例外、実際の完成見本、問い合わせ先が含まれます。

15〜21日目: 後任が主担当として処理する

後任または外部担当者が作業し、退職者はレビュー側へ回ります。ここで発生した質問は、マニュアルの不足として追記します。

レビューでは、単に仕訳や金額が合っているかだけでなく、期限内に必要な承認まで終わったかを確認してください。

22〜30日目: 逆引き確認と移管を完了する

最後の週は、業務名から手順を見るだけでなく、「この請求書はどこで処理されたか」「この入金差異は誰が確認中か」と実際の取引から追跡できるかを確認します。

退職日までに、次を一覧で受け取ります。

  • 未処理の請求、支払、入金、経費精算

  • 確認待ち・承認待ちの取引

  • 今後60日分の締め日

  • システム別の管理者と利用者

  • 定例の税理士・社労士・取引先連絡

  • 月次チェックリストと直近の完成物

  • 例外処理の履歴

退職後は不要な権限を停止し、会社が管理するアカウントだけで業務を継続できることを確認します。

引き継ぎ期間が7日以下しかない場合

30日計画を短縮するときは、すべてを引き継ごうとせず、会社のお金と法定期限に直結する業務を守ります。

当日

  • 銀行、会計、給与、請求、経費精算の管理者権限を確保する

  • 直近30日の支払・給与・請求・納付予定を確認する

  • 顧問税理士・社労士へ連絡する

  • 未処理一覧を作る

3日以内

  • 支払、給与、請求を後任が実行できるか試す

  • 取引先・従業員への影響が大きい期限から担当を決める

  • 社内で処理できない範囲を派遣・経理代行・税理士へ相談する

7日以内

  • 次回月次までの暫定フローを決める

  • 作成と承認を分ける

  • 採用までのつなぎではなく、外部化を続ける業務を仮決定する

緊急時ほど、ネットバンキングのIDを共有して一人に丸投げする対応は避けてください。必要最小限の権限を個別に付与し、操作履歴と承認を残します。

採用・派遣・経理代行のどれで穴を埋めるか

方法向いている状態社内で必要なもの注意点
正社員採用経理判断と管理を中長期で内製したい採用、教育、レビュー担当入社までの空白期間を別手段で埋める
派遣手順があり、社内から直接指示できる経理管理者、業務手順、席・権限人を入れるだけでは属人化は解消しない
フリーランス限定した業務を柔軟に依頼したい委託範囲、窓口、レビュー個人への再属人化と代替要員を確認する
経理代行・BPO定型業務をチームへ移し、運用を整えたい社内承認者、資料提出、例外判断初期棚卸しと移行期間を見込む
税理士・社労士税務・労務の専門判断と手続きを確認したい必要資料、社内窓口日常経理の対応範囲は契約ごとに異なる

一人経理の退職時は、採用か外注かを二者択一にする必要はありません。採用まで経理代行を使い、採用後も請求・支払準備・記帳などの定型業務だけを外に残す方法があります。

依頼形態の違いは経理代行・アウトソーシングの比較方法で確認できます。

外部化しやすい業務と社内に残す業務

外部化しやすい業務

  • 証憑の回収状況確認と整理

  • 会計ソフトへの入力

  • 売上請求書の作成・送付

  • 支払予定表と振込データの作成

  • 入金確認・消込

  • 経費精算の形式チェック

  • 月次資料の取りまとめ

  • 顧問税理士への資料共有

社内に残すべき業務

  • 取引の実在性と内容の確定

  • 新規取引先・振込先変更の承認

  • 支払の最終承認と実行

  • 例外取引の経営判断

  • 資金繰りと予算の意思決定

  • 税理士・社労士へ相談する事項の決定

外注範囲を「作業名」だけで決めず、作成、確認、承認、実行の役割まで分けることが重要です。

退職後に同じ状態へ戻さないための90日計画

引き継ぎが終わっても、後任一人へすべてを移せば一人経理のリスクは残ります。退職後90日で次を整えます。

1〜30日: 暫定運用を安定させる

期限を守り、未処理件数と確認待ちを毎週確認します。例外が出るたびに手順と担当を更新します。

31〜60日: 権限とチェックを分ける

作成者と承認者、振込データ作成者と銀行承認者を分けます。すべてを一人で完了できる権限は見直します。

61〜90日: 業務量と外注範囲を見直す

手作業、差し戻し、待ち時間を測り、社内で判断すべき業務と外部化する定型業務を再決定します。

退職日まで余裕がある場合は、経理の属人化を解消する90日計画で代替者テストまで進めます。後任採用が間に合わない場合は、経理採用が難しい会社の90日対応もあわせて体制を設計してください。

よくある質問

一人経理が退職するとき、最初に何を確認すべきですか?

直近60日分の給与日、請求日、支払日、納付日、月次締め日と、銀行・会計・給与・請求システムの管理者権限を確認します。後任採用より先に、期限とアクセスを確保してください。

引き継ぎマニュアルには何を書けばよいですか?

操作手順だけでなく、開始条件、締め日、元資料、承認者、完成物、よくある例外、問い合わせ先を記載します。過去の完成物を見本として紐づけると、後任が判断しやすくなります。

後任が決まっていなくても引き継げますか?

会社の責任者が一度受け取り、派遣や経理代行へ定型業務を移すことは可能です。会社側には、取引内容を確定し、例外と最終承認を判断する人を残す必要があります。

顧問税理士へすべて引き継げますか?

契約範囲によります。税務判断と申告は税理士へ相談できますが、請求書発行、支払進行、入金確認、経費精算などの日常実務を扱わない事務所もあります。現在の契約と対応範囲を確認してください。

まとめ

一人経理が退職するとき、会社が最初に守るべきなのは、給与、請求、支払、入金、納付、月次の期限です。24時間以内に予定と権限を確保し、30日間で棚卸し、実地操作、例外の文書化、後任主体の処理、最終移管まで進めます。

後任採用だけに頼らず、派遣、経理代行、税理士を役割ごとに組み合わせると、退職後の空白を埋めながら再属人化を防げます。

経理担当者の退職が決まっている、引き継ぎ期間が短い、何が止まるか分からない場合は、経理の緊急引き継ぎ支援をご確認ください。退職日、直近の支払日、給与日、利用ツール、顧問税理士の有無をもとに、最初に守る業務と、社内に残す承認、外部へ移せる実務を分けます。

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